SpecialContents vol.17 快適な"ご長寿ライフ"のための住環境を考えよう

高齢者に優しい空間は、子供や妊婦さん、障害を持つ人にも優しい空間です。9月の「敬老の日」を前に、家族の皆さんが安全に暮らせる住環境を考えてみませんか?安全な家具選びのコツや、少しの工夫で日常の危険を回避する方法、バリアフリーリフォームの助成金などについてもご紹介します。

快適な住環境は年齢とともに変化する

"老い"は、どんな人にも平等に訪れます。高齢になれば若い時よりも五感が鈍り、身体的能力が低下するのは当然のこと。若いころ快適に使えていた家具や住まいが使いづらいものになってしまうことも……。そこでご高齢の方や、近い将来ご自身またはご家族が高齢となる方に役立つ情報をご紹介します。この機会に一緒に考えてみましょう。

ちょっとの工夫で快適に

高齢になってから快適に暮らすためには、元気なうちから高齢になった後の住まい方を考えておくことが重要です。

写真「家族 イメージ」

しかしながら、若いうちに住まいを購入するとき、高齢になってからの生活を考慮して設備を整えるのはなかなか難しいものです。また、入居後に住まいをリフォームするのも難しい場合があります。

そこで入居後でも、少し工夫するだけで高齢者が暮らしやすくなる方法を、いくつか具体例を挙げてご紹介します。

照明を明るくする

高齢者が青年と同じ視力を得るためには、60歳で約2倍、70歳では2.6倍の照明が必要といわれています。照明を明るくし、影ができにくくすることで、つまずいたり体をぶつけたりする事故が減らせます

夜間の暗闇をなくす

トイレや廊下、寝室の足元などは、夜間でも暗闇にせず小さな明かりでよいので点灯しておきましょう。
就寝中に何かの理由で起きても、暗闇による事故を減らせます。

つかまることができる家具に変える

写真「つかまることができる家具 イメージ」

不意の転倒を減らすため、家具は人がつかまっても転倒しないものにすると安心です。購入する際、あらかじめ手すり替わりになるものを選ぶのも良いでしょう。
テーブルは立ち上がる際に手をつくことが多いので、体重をかけても倒れたり動いたりしないものを選びましょう。
イスは座面までの高さが40センチ程度で、座って足の裏が着くことが大前提。座るときに後ろに動かないよう、キャスター付きのものは避けたほうが無難です。

ベッドを変える

就寝中の寝返りによる転落事故をなくすため、若いころよりも幅の広いベッドに変えましょう。
高さは、腰かけたときに足の裏が床にぺたりと着くくらいの高さを目安に選びましょう。

ラグやカーペットの縁を止める

写真「敷物のある部屋 イメージ」

家の中でのつまずき事故で段差と同等に多いのが、敷物の縁に足をひっかけてしまう事故です。
畳の上にゴザを敷いているならゴザ用の鋲(びょう)を狭目の間隔で縁に打ち、またフローリングの上にラグやカーペットを敷く場合は専用両面テープを使って、たわまないようにしっかりと張った状態で固定します。

住み慣れた家だからこそ要注意!

若いころには意識しなくてもできていた動作が困難になったり、住み慣れた家の中でも少しの油断でケガをしてしまったり……。高齢になると外出する機会が減るため、事故に遭いにくいと思われがちですが、実は外出先での交通事故より、家庭内での不慮の事故のほうが確率が高いことが分かっています。

住まいの中で危険度が高い場所はどこ?

写真「階段 イメージ」

高齢者が暮らす家の中で特に注意したいのは、大きな段差(階段や玄関のたたきなど)・少しの段差(敷居など)・バスルームです。

段差は、足をすべらせたり、上り下りでバランスをくずして転倒したりすることが多い場所。を意識して持ち上げないと進めない段差が連続する階段は、手すりがあってもつかみ損ねてしまうことがあります。

写真「段差 イメージ」

近年ではバリアフリー化が進み、大きな段差はなくなってきましたが、玄関のたたきなど1段で30センチ以上の段差がある場合は、足をひっかけやすいので、段数を増やして低い段で超えられるようにすると良いでしょう。見逃しがちなバルコニーに出る際の段差もよく確認しておきたいところです。

また段差が1~2センチと低い場合も、不意をつかれてつまずくととっさには手が出せず、頭から転倒したりして重大事故につながりかねません。敷居などは室内用スロープを設置するか、段差解消用のテープなどを貼って平らにしておくと安心です。

写真「バスルーム イメージ」

バスルームは、階段や少しの段差よりも事故発生件数が少ないにもかかわらず、死亡者や重大事故の件数がダントツに多くなっており、注意が必要です。

事故の原因は温度差によるヒートショックや転倒などさまざまですが、身体的特徴や病歴などを考慮して、浴室暖房の使用や手すり緊急呼び出し装置を付けるなど事前の対処がおすすめです。

スペースごとの改善ポイント

日常的に高齢者と接する、"介護のプロ"の目から見た「住宅の中の危険個所の指摘」を参考に、住まいの中の改善ポイントをご紹介しましょう。

玄関

写真「玄関マット イメージ」

【こんな危険が!】

玄関マットがすべる、縁に足をひっかけてつまずく。
・身支度中にが不意に開閉し、体にぶつかって転倒。
夜の帰宅時、暗くて転倒したり体をどこかにぶつけたりする。

【リフォーム以外の対処法】

・玄関マットの下に滑り止めを敷く。縁が浮かないように専用の両面テープで固定する。
扉止めを設置し、任意の幅で開けておけるようにする。
人感センサー付きの電球にする。

トイレ

写真「トイレ イメージ」

【こんな危険が!】

・使用中に気分が悪くなり、自分では出られなくなる
便座から立ち上がりにくい。

【リフォーム以外の対処法】

・居間などにつながるインターホンを設置。内鍵を無くす。
・立ち上がる手助けをするためのを置く。

浴室

写真「浴室 イメージ」

【こんな危険が!】

・バスタブの縁が高く、底までが深く、湯に入りにくいため転びやすい。
・湯につかると体が浮いてしまう
浴槽内で足が滑って転ぶ。

【リフォーム以外の対処法】

・バスタブの外側・中にステップを置き、壁に手をついて出入りする。
バスタブ専用のイスに座って浸かり、肩まで浸かりたい場合はイスの手前で入る(湯の中で体を横たえない)。
・浴槽の底に専用の滑り止めマットを敷く。

洗面所

写真「洗面所 イメージ」

【こんな危険が!】

両手で顔を洗うとき、バランスをくずして転倒しやすい。
・洗面台の前の床が、こぼれた水で滑る。

【リフォーム以外の対処法】

・転倒した時に備えて、鋭利なもの割れものは近くに置かない。
・床に吸水性の高いマットを敷く(マットの下には滑り止めを敷き、縁が浮かないようにしておく)。

リビング

写真「リビング イメージ」

【こんな危険が!】

ソファに体が沈み込んで、立ち上がれなくなる。
電気ヒーターなどの熱源が高温になる暖房を、つい消し忘れる。

【リフォーム以外の対処法】

・ソファの座面の高さは40~45センチ程度にする。柔らかすぎる座面には固めの座布団を敷く。
・熱源が高温になる暖房は、熱源が高温にならないオイル循環式のヒーターエアコンに変える。

キッチン

写真「キッチン イメージ」

【こんな危険が!】

火の不始末を起こす。
調理中に移動する際、何かにつまずいて転倒する。

【リフォーム以外の対処法】

・ガスコンロはIH調理器に変える。
・キッチンには火のほかに刃物もあり、転倒するととても危険なため、コード類や不要な家具を置かず、なるべくシンプルにしておく。
※建物によってはIH調理器に変更できない場合があります。

<参考文献>「高齢者が自立できる住まいづくり」彰国社刊

助成金・補助金利用でバリアフリー化を

介護リフォームが必要になったとき、介護保険では、介護を必要とする人の負担が少しでも小さくなるように介護リフォームへの補助金が用意されています。その時に備えて、一度チェックしておきましょう。※マンションでバリアフリーリフォームを行う場合、壁に下地材が入っていないと手すりを設置できないなどの問題があるため、あらかじめマンションの管理組合に確認しましょう。

介護保険制度の補助金を利用しよう

介護保険制度では、在宅で生活し、「要支援」または「要介護1~5」と認定されている人の中で、住宅改修が必要とされる人に対して、20万円までの介護リフォームを1割の自己負担で実施することができます。
支給限度額は要支援・要介護区分にかかわらずひとり当たり一生涯につき20万円までの定額となっていますが、限度額内であれば一度に全額を使い切らなくてもよいので、必要に応じて手すりなどを増やしていくことも可能です。
さらに、要介護状態区分が3段階以上重くなったときや、転居した場合には、新たに20万円まで給付を受けることができます。

適応される住宅改修の種類

1.手すりの取付け

写真「手すり イメージ」

【施工例】

玄関・廊下・階段・トイレ・浴室・洗面所などの屋内に設置する手すりのほか、出入り口から道路までの屋外の手すりなどにも適用。

2.段差の解消

写真「段差解消 イメージ」

【施工例】

引き戸レールや敷居の段差を撤去する、玄関や浴室・出入り口などの段差をスロープや踏み台・床工事などで解消する際に適用。

3.滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更

写真「床材変更 イメージ」

【施工例】

車イスが利用しにくいや、歩行時に滑りやすい床を、フローリングや固い床材などに変更する場合に適用。

4.引き戸等への扉の取替え

写真「引き戸 イメージ」

【施工例】

開き戸(ドア)を引き戸・折れ戸・アコーディオンカーテンなどに変更する際に適用。より操作しやすいドアノブへの変更や、戸車の設置も含まれる。

5.洋式便器等への便器の取替え

写真「洋式便器 イメージ」

【施工例】

洋式便器への交換や、便器の高さを変更する必要がある場合の洋式便器の取替えに適用。

▼ ご参考:厚生労働省ホームページ「居宅介護住宅改修・介護予防住宅改修に係る介護保険の給付」

概要:http://www.mhlw.go.jp/general/seido/
toukatsu/suishin/dl/07.pdf
(82KB)

※告示改正により、平成12年12月以降、玄関から道路までの(建物と一体ではない)屋外での工事も住宅改修の支給が可能となりました。

自治体の助成金制度もチェック!

自治体によっては、介護保険制度とは別に、高齢者や障害者向けの住宅リフォームのための助成金を支給しているところがあります。
助成金額や助成率、助成制度の内容などは自治体によって異なるので、介護リフォームを検討する際には、ケアマネージャーだけでなく各自治体の担当窓口にも相談してみるのがおすすめです。

写真「ライフスタイル イメージ」

ご本人と大切な家族のために今すぐ安全な住環境を整えたい人も、将来のために介護を見据えた住環境の知識を蓄えたい人も、まずは現在の住環境とライフスタイルを見つめ直すことから始めてみてはいかがですか?

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